イケアが「Roblox」のバーチャル店舗で働く従業員を募集、時給は約2600円

デジタルのミートボールを売ったり、家具選びを手伝ってみたい? それとも、お化け屋敷となった家具店が舞台の「Roblox」ゲーム「3008」をよくプレイしている?
そんなあなたが英国かアイルランド在住の18歳以上なら、朗報だ。スウェーデンの家具店であるイケアがRoblox上に店舗をオープン予定で、“従業員”を募集している。時給は13.15ポンド(約2,600円)。勤務地はバーチャルだが、給与はRobuxで支払われるわけではない。
イケアで働く世界に没入
イケアが「Co-Worker Game」と呼ぶこのゲームは、6月24日にオープンする予定だ。プレスリリースによると、プレイヤーである従業員は「イケアで働く世界に没入」できる。応募時には、「あなたがもしピクセル化されたイケア家具だったら、何になりたいですか?」「ビストロでピクセル化されたホットドッグがなくなったら、あなたはどうしますか?」といった質問に答えることになる。
YouTubeのようなプラットフォームでは、コンテンツクリエイターたちがすでにこの求人についての動画を作成し、それがいかに「奇妙で奇抜」であるかを指摘している。背景に踊る人がいるなか、商品が空中を飛び交っている様子の動画を投稿し、Robloxでのイケアの仕事の潜在的な不気味さをユーモラスに表現した人もいる。
別のXユーザーは、実在の小売業者がゲームプラットフォームに登場することが、「既存のゲームやコミュニティにどのような影響を与えるのだろう」と投稿した。「3008」のようなゲームはオンライン・ホラーの伝承から生まれたようだ。Roblox上の仮想イケアには、「3008」のような不気味な家具店と同じ魅力はないかもしれない。
しかし、こういったイケアに対する熱狂を利用することが、「Co-Worker Game」の狙いの一部なのだ。このゲームの制作において、イケアオンライン上のファンダムが果たした役割について尋ねられた同社の担当者は、オンラインとオフライン双方のイケアチェーンに対する人々の思いにインスパイアされたと『WIRED』に語った。このゲームをプレイすることを通じて、同社で「働きたい」と思ってもらうことが最終目標なのだという。
イケア英国・アイルランド支社のピープル&カルチャー・マネージャーであるダレン・テイラーは、イケアの従業員が「ゲームの中でも現実の世界でも、役割を変えたり、部署を変えたり、好きな方向に成長」ことを、ゲームを通じて示そうとしているという。
ゲームでお金を稼ぐ難しさ
また、Robloxのツールを使ってゲームをつくる若い開発者たちが難しいと感じてきたのが実際の賃金を稼ぐことだ。Robloxでファッション・小売パートナーシップの責任者を務めるウィニー・バークが『Rolling Stone』に語ったところによると、Z世代はこのプラットフォームで「毎日何百万時間も」過ごしているという。ならば、それを通じてお金を稼ぐことはできないのか?
子どもに人気のゲームプラットフォーム「Roblox」は、若年層からの“搾取”で成り立っている
BY CECILIA D'ANASTASIO
Robloxのプレイヤーたちは、「自分のデジタルライフを物理的な人生と同じくらい(時にはそれ以上に)重要視している」とバークは言う。現実の仕事と同程度の賃金が稼げるのであれば、在宅でできるイケアの仕事は、リアルの仕事と同じくらい重要になるかもしれない。
突飛に聞こえるかもしれないが、前代未聞の話ではない。2022年、VRChatのプレイヤーたちはバーチャル空間に再現されたKマートの店舗で、従業員として面接を受け、スタッフバッジをつけ、レジ会計業務をするというロールプレイを行なった。この時は無給だった。それでも、一部のプレイヤーにとっては、コミュニティを築き、現実の仕事が時として抱かせる社会的不安を克服するための方法になった。
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イケアの新ゲームが今後も継続されるのか、それとも単発で終わるのかはまだ不明だ。でも、カップルで初めての買い物に挑戦しようと考えているのなら、まずはRobloxのイケア店舗で体験してみるのはいいかもしれない。
(Originally published on wired.com, translated by Mamiko Nakano)
※『WIRED』によるイケアの関連記事はこちら。
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